「画像まわりの生成AI、もう追いきれないんだけど…」
「メールもコードも3Dも動画も、全部“AIアシスト付き”にしろってこと?」
そんな気分になったこと、ありませんか?
ここ数週間のアップデートはまさにそれで、Multi-Color Printing から HY 3D Studio 1.2、Cowork、VibeCode、Gmail×Gemini まで、「全部入りOS」化の流れが一気に加速しています。
でも、ただの「機能が増えました」ではなく、今回のラッシュには、エンジニア視点で見るとかなり本質的な変化があります。
一言でいうと:「Docker から Kubernetes になった」瞬間

今回のアップデート群を雑に一言でまとめると、
生成AIが「単機能のモデル」から「ワークフロー全体を編成するインフラ」に昇格した瞬間
です。
歴史的にいうと、
- 昔:Docker が出て「コンテナ動くじゃん、便利〜」だった頃
- いま:Kubernetes が当たり前で「ネットワークもストレージもロールアウトも、全部まとめて面倒見てくれないと困る」状態
これとそっくりなことが、生成AIでも起きています。
- 画像:マルチカラー印刷対応(Multi-Color Printing)、ライティング再マップ(LightingRemap_Alpha)
- 3D/動画:HY 3D Studio 1.2、OpenVoxel、RigMo、Camera Controls、TMD、V-DPM
- マルチモーダル:Step3-VL-10B、HeartMuLa
- ワークフロー/開発:Gmail×Gemini、Cowork、VibeCode、Alterbute、Learn Your Way
バラバラに見ると「またツール増えたな」で終わりますが、まとめて見ると方向性はひとつ:
現実のワークフローに “直接” 食い込んでくるフェーズに入った 🚀
一番デカい変化は「画面の外」に出たこと
Multi-Color Printing が地味にやばい理由
正直、今回いちばん「あ、時代変わったな」と思ったのは Multi-Color Printing です。
今までの画像生成って、基本的に「RGBスクリーン前提」だったんですよね。
- きれいに見える → OK
- 印刷したら色ズレ・つぶれ → それは DTP チームの問題
だったのが、
最初から「印刷現場」や「多インク構成」を意識した生成パイプライン に踏み込んだ。
これは、Webデザイナーが Photoshop 内だけで完結してた世界から、一気に「印刷所の RIP 設定まで含めて責任持ちます」って言い始めたようなもので、かなり踏み込みが深いです。
LightingRemap_Alpha:写真“撮り直し”を API 化する
LightingRemap_Alpha も同じ方向性です。
- いま:
- 撮り直す
- レタッチ職人ががんばる
- これから:
- API に「この商品、夕方の自然光っぽく」「スタジオライトで」って投げるだけ
正直、EC や不動産、ファッション系の現場でちゃんと精度出るなら、
撮影ディレクションのかなりの部分が “プロンプトディレクション” に置き換わる 可能性がある。
D/動画スタックは「Unreal Engine の外側」が AI で埋まり始めた

HY 3D Studio 1.2、OpenVoxel、RigMo、Camera Controls、TMD、V-DPM…
このあたりは、一見バラバラですが、やっているのはこうです:
- HY 3D Studio:テキスト/2D → 3D メッシュ(しかも多少はマトモなトポロジ)
- OpenVoxel:ボクセルベースの 3D 基盤(研究コードじゃなくインフラ寄り)
- RigMo:自動リギング・モーション転送
- TMD・V-DPM:動画・時間軸そのものをモデリング
- Camera Controls:カメラパスを、ランダムじゃなく“スクリプトで”制御
つまり、
「3D モデル作る → リグ組む → カメラ回す → モーション付ける → レンダーする」
という、Unreal/Unity 前の下流工程のかなりの部分を AI がかっさらい始めた
という話です。
ぶっちゃけ、
「社内プロトタイプ作るだけなのに、毎回 Blender 開いてモデリングしてるの、もうやめません?」
というレベルまでは、数バージョンで到達しそうな流れ。
Gmail×Gemini, Cowork, VibeCode:開発者の「基準値」が上がった
Gmail × Gemini:メールクライアントのゲームセット宣言
Gmail にネイティブ統合された Gemini は、単に「メールを書くのが楽になる」話ではなくて、
「アプリの中にコンテキストを理解した LLM が常駐している」のが当たり前
という UX をユーザーにインストールしてしまうのが本質です。
これが意味するのは:
- メール:
- チャット欄にコピペして「要約して」じゃもう古い
- メールボックスそのものが「要約・下書き・分類・自動アクション」を持っていて当たり前
- 他の SaaSも:
- 「画面を見ながら、その場で提案してくれる」AIがいないと、
「え、まだ 2023 年の UX なんだ…?」と感じられてしまう
Superhuman みたいな「AI 付きメールクライアント」は、
正直、ここからは「どれだけ Gmail より深いワークフローを切り取れるか」が勝負になります。
Cowork:LangChain で自作してた人たちのビジネスモデル圧縮
Cowork 系のマルチエージェント環境は、
- 開発者からすると:
- LangChain / AutoGen で「プランナー」「コーダー」「レビュアー」エージェント組んでたあの感じを、
- ほぼプリセットで提供される世界観
に近いです。
これ、競合的にはかなりエグくて:
- 今まで:
- 「我々はマルチエージェントで自律的にタスクを進める SaaS です」がピッチになった
- これから:
- 「それ、Cowork にタスクスキーマ足すだけで良くない?」と言われるリスク
が高い。
エージェント基盤そのものを売ろうとしているスタートアップは、
正直、差別化ストーリーをかなり入れ替えないと厳しいと思っています。
VibeCode:DX(Developer Experience)勝負のフェーズに突入
VibeCode は名前からして「性能より“ノリ”を売りにしているコードアシスタント」で、
- ベンチマークスコアより、
- 多ファイルコンテキスト、会話のしやすさ、IDE 統合のスムーズさ
みたいな 開発者体験重視 の路線に振っているように見えます。
これは CoPilot / Cursor との真正面衝突ゾーンですが、
どのみち我々エンジニア側にとっては「補完なしでコードを書く」時代には戻らないので、
今後の IDE は「ビルドボタン付きテキストエディタ」じゃなく「会話できるペアプロ相棒付き IDE」が標準
になる流れが、さらに強化された感じです。
Multi-Color Printing が示した「全部入りOS」へのユーザー欲求

面白いのは、コミュニティ側の空気も、はっきり「全部入り」に寄っていることです。
- ノートアプリに対して:
- 線形 + 並列
- リンク
- 数式
- 拡張機能
- オートコンプリート(=AI 補完)
- 手書き + タイピング
- 図形 / 色
-
高機能検索
→ ぜんぶ 1 つのキャンバスでやりたい、という声 -
3D / マルチカラー界隈でも:
- 「映え作品」だけじゃなく「実用品」「現実世界の部品」にマルチマテリアル・AI設計を使いたい
つまりユーザーは、
「ChatGPT で返事を書いて、Notion でメモして、Figma で図を書いて…」という分断された状態に、
うっすら疲れてきているわけです。
1つのキャンバス(ノート、3Dシーン、メールクライアント…)の中で、
テキストも図もコードも検索も AIも、全部つながってほしい 🤝
という欲求がかなり強くなっている。
Multi-Color Printing や Camera Controls は、その「現実ワークフローの深いところ」に向けて、
ようやく AI 側から歩み寄ってきた感じがします。
じゃあ何が「怖い」のか:3つの懸念
ここまで褒めてきましたが、正直、懸念点もかなりあります。
懸念1:コスト地獄(とくに Step3-VL-10B / HeartMuLa)
10B クラスのマルチモーダルモデル(Step3-VL-10B, HeartMuLa 系)は、
- GPU 24〜40GB クラスが平然と前提になりがち
- マルチモーダル入力でバッチ効きづらい
- 昇格呼び出し戦略を入れないと、あっという間に請求が炎上
「とりあえず全部 10B で回そう」は、
プロダクションではほぼ自殺行為です。
現実的には:
- 小さいテキストモデルで 80% を処理
- 画像が絡む or 推論が難しいケースだけ 10B にフェイルオーバー
- さらに INT8/FP8 で量子化
くらいの戦略を最初から設計に組み込まないと厳しい。
懸念2:ベンダーロックと UX の呪い
- Gmail × Gemini
→ メール + スケジュール + ドライブ + LLM まで、Google にべったり - Cowork / VibeCode
→ 特定 LLM ベンダのプロトコルにべったり
これ、単に「乗り換えがだるい」だけじゃなくて、
ワークフローそのものがそのベンダー仕様で「教育」される のがキツい。
たとえば:
- チーム全員が Cowork ベースで開発を回すようになると、
- タスク分解〜実装〜レビューの流儀が Cowork 前提になる
- 別ツールに変えた瞬間、生産性がガタ落ちする
DX が高いほど、その環境から抜け出せなくなるのがロックインの本質なので、
ここは意図的に「分離レイヤ」を設計しておかないと詰みます。
懸念3:アルファ系 API(LightingRemap, OpenVoxel, RigMo, TMD, V-DPM)は「壊れる前提」で扱うべき
この辺は、名前からしてまだ研究寄り・アルファ版の匂いが強いので、
- パラメータが次の minor で平然と変わる
- 出力フォーマットが揺れる
- ドキュメントが追いつかない
という前提で見たほうがいいです。
ぶっちゃけ、
「これらに依存した本番機能を今入れる」のは、かなりギャンブル
だと思っています。
- 3D/動画系は、R&D 用のサイドプロジェクト or 社内ツールから
- 画像/印刷系も、最初は「人間レビュー必須」のワークフローに限定
くらいがちょうどいいバランスかなと。
他社・既存ツールと比べて何が変わるのか?(競合目線)

既存ツールで一番つらくなるのは「単機能プレイヤー」
今回明確に割を食いそうなのは:
- 従来のプリプレス・色分解専用ソフト
→ Multi-Color Printing で「そこそこまで」は自動化される - 3Dモデリングの“入り口”だけを売りにしているツール
→ HY 3D Studio / OpenVoxel / RigMo で、ラフ〜中品質までは自動化される - 「AI メール整理」だけをやってる SaaS
→ Gmail ネイティブ Gemini に完全にかぶされる - 単なるコード検索 / doc サーチツール
→ VibeCode や Cowork + LLM の「会話ベース開発」に押しつぶされる
「○○だけやります」というプロダクトは、
正直これから 1〜2 年でほとんど「機能の一部」と認識されるようになるはずです。
Cowork vs LangChain/AutoGen スタック
- Cowork:
- ある程度役割・プロトコルがプリセットされた“体験”としてのマルチエージェント
- Dev やナレッジワーカー向けにすぐ使える UX に振っている
- LangChain/AutoGen:
- 自由度は高いが、ぜんぶ自分で組み立てる「フレームワーク」
正直なところ:
- 「社内向けの一般的なマルチエージェント UX 作りたい」程度のニーズなら
→ Cowork ベースで拡張したほうが早い - 「特定ドメインに最適化した“変態エージェントシステム”を作りたい」なら
→ まだ LangChain / AutoGen 勝ち
という棲み分けになりそうです。
LangChain 的スタックのビジネスは、
「エージェントそのもの」から「エージェントを使った vertical 特化ソリューション」に
シフトしないと厳しいフェーズに入っています。
じゃあ、プロダクションでどこまで使うのか?(個人的な結論)
ぶっちゃけ、今このタイミングでの自分のスタンスはこんな感じです:
「今すぐ試すべき」ゾーン
- Multi-Color Printing
- Web-to-print / パッケージ / ラベル / POP を扱うなら、まずは PoC したほうがいいレベル
- ただし ICC プロファイル & 実機プリント検証を必ず挟む前提で
- Gmail × Gemini
- チームとして「メール + LLM」ワークフローを体験しておく価値がある
- 自社 SaaS の UX 企画にも直で効いてくる
- VibeCode / 類似 IDE アシスタント
- 開発チームの生産性に直結するので、「誰も使ってません」はさすがに出遅れ感
「R&D or 限定運用」ゾーン
- LightingRemap_Alpha
- EC / 不動産 / カタログ系の画像処理ラインにかなり効くが、
まだアルファなので「人間レビュー前提 + オプトイン機能」として限定導入が妥当 - HY 3D Studio 1.2 / RigMo / OpenVoxel / TMD / V-DPM / Camera Controls
- 3D / 動画系プロダクトを持っているなら、まずは社内ツールとして
「プロトタイプ生成」「ラフモック作成」に投入する価値あり - ただし、本番アセットは結局 DCC で手入れが必要な前提を崩さないほうが安全
「慎重に選択」ゾーン
- Step3-VL-10B / HeartMuLa
- 深いマルチモーダル推論が本当に必要な領域(医療、インフラ監視、専門家支援など)以外は、
まずは小さいモデル + 外部 LLM の組み合わせから入るほうがコスパが良い - Cowork / Learn Your Way / Alterbute 系
- 使い方次第で爆発的に効くが、
- ロックイン
- モデル挙動のブラックボックス化
というリスクも抱えるので「チーム単位のパイロット運用 → 評価してから拡大」が無難
最後に:何に投資し、何を捨てるか

今回のアップデートラッシュを眺めていて、いちばん強く感じるのは:
もう「全部追う」のは不可能だから、
どこを自分たちのコア能力として握り、どこをツールに丸投げするかを、
技術チームがあえて決めにいかなきゃいけないフェーズに来た
ということです。
- 3D モデリングを自社のコアにするのか?
→ なら HY 3D Studio / OpenVoxel / RigMo は「使われる側」ではなく「組み込む側」に回る - 印刷ワークフローのノウハウを武器にするのか?
→ Multi-Color Printing をただの便利機能で終わらせず、
自社の色再現ノウハウを AI の上にさらに重ねるべき - 開発プロセスそのものを差別化したいのか?
→ Cowork / VibeCode をどう「自社流」に料理するかが鍵になる
プロダクションでの採用は、正直まだ「様子見すべきレイヤー」と「今すぐ入れていいレイヤー」が綺麗に分かれています。
個人的な結論としては、
- UX に直結するツール(Gmail×Gemini, VibeCode, Multi-Color Printing) は、
早めに体験して“基準値”を上げておくべき - 基盤より下(アルファの 3D/動画スタックや巨大マルチモーダル)の全面採用 は、
もう少し成熟とコスト構造が見えるまで、実験的運用に留めるのが現実的
というスタンスです。
「全部入りの知的作業OS」への期待が高まる一方で、
エンジニアとしては「どこまで全部入りを許すか」を、
冷静に線引きしていく必要があるフェーズに入った、というのが今回のラウンドアップへの正直な感想です。


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