「また同じことを別のアプリで聞かれた…」
「この設定、さっき別のサービスで教えたじゃん…」
こういうイライラ、開発者としてもユーザーとしても、何回味わいましたか?
アプリごとに別々の「お利口さんAI」がいるせいで、コンテキストも履歴も毎回リセット。
LLM時代になっても、「毎回自己紹介から始まる地獄」から抜け出せていない人、多いはずです。
そこに出てきたのが、Googleの「パーソナルインテリジェンス」と、Veo 3.1の縦型動画対応。
一見バラバラなニュースですが、正直これは、
「アプリごとのLLM時代 → OSレベルの“個人OS + コンテンツ工場”時代」へのシフト
だと感じています。
一言でいうと、これは「AI版・Googleアカウント + 縦型カメラ革命」です

- パーソナルインテリジェンス
一言で言うと、「LLM界の Googleアカウント + Google Now + Siri + Microsoft Graph を、1つの“あなた専属AI”として再定義したもの」
です。
各アプリにいるバラバラなAIではなく、
“Googleアカウントに紐づいた1つの長期記憶つきAI人格”が、Android / Chrome / Workspace / そして他社アプリまで跨いで動くイメージ。
- Veo 3.1の縦型動画対応
これは、「カメラAPIが“縦撮り”を真面目にサポートし始めた時と同じ」
です。
16:9で作ってから「とりあえずトリミングして9:16にしときました」じゃなく、
最初から9:16前提で構図・動き・被写体配置を最適化する動画生成モデルになった。
どちらも共通しているのは、
「パッチワーク的な“後付け”ではなく、アーキテクチャレベルで“個人”と“縦コンテンツ”を一級市民として扱い直した」
という点です。
これ、なぜそんなに重要なのか?(特に開発者視点で)
パーソナルインテリジェンスは「LLM付きGoogleアカウント」の完成形になりうる
技術的には、パーソナルインテリジェンスは:
- 背後にGeminiファミリー(マルチモーダル)
- Googleアカウントをアンカーにした長期記憶(メール、カレンダー、Drive、検索履歴、位置情報…)
- それを一つのAIエージェントとしてオーケストレーション
→ メール読める、日程調整できる、ドキュメント探せる、スマホ上で動ける
という構造になりそうです。
これ、アナロジーで言うと:
- 「アプリごとの検索 → iOS Spotlight & Siri集約」
- 「各サービスのログイン → Googleアカウント一元化」
の AI版の再演 です。
LLMを組み込んだアプリを作っていると、みんな同じ苦しみを味わっています:
- ユーザーの好みをどこに保存するか(自前DB?ベクターストア?)
- カレンダーやメールと連携したいけど、OAuthとAPIを自分で叩いて推論させて…地味に面倒
- 別アプリとコンテキストを共有したいけど、まともな共通レイヤーがない
パーソナルインテリジェンスが本当に実現すると、開発者側の発想はこう変わります:
-
従来:
「うちのアプリ専用の“アシスタントAI”を作って、ユーザー設定も全部うちで持つ」 -
これから:
「ユーザーには“OSレベルの専属AI”がいる前提で、そのAIに“うちのアプリで何をしてほしいか”だけ教える」
要するに、
自前で「ユーザーモデル + 長期記憶 + アクション計画」を全部実装するのではなく、
Googleが面倒を見る“個人OS”に、うちのアプリの能力(Actions)を登録していく世界
に寄せていくことになります。
Veo 3.1の縦型対応は、単なる「解像度オプション」ではない
縦型動画対応って聞くと、「あぁ、aspect_ratio: 9:16が選べるようになったのね」でスルーしがちですが、
今回のはモデルレベルの最適化を含んでいるのがポイントです。
- 16:9生成 → 後からクロップ ではなく
- 9:16前提で学習・チューニングされた生成
- 人物の頭や足が切れない
- ダンス・商品紹介・街歩きなど、「縦画面で自然に見えるカメラワーク」
これ、スマホカメラの歴史とよく似ています。
- 初期:横長前提 → 縦で撮るのは“回転させた横”
- 途中から:UIもAPIも「縦」を前提にデザイン → SNSのUX・コンテンツフォーマットが激変
今のショート動画(TikTok / Reels / Shorts)の世界は、
「最初から縦でどう見えるか」で編集されています。
Veo 3.1の“ネイティブ縦”は、
「生成の段階からショート動画をターゲットにする」宣言
であって、
「動画を作ったあとに、とりあえず縦でも書き出せます」ではない。
開発者的には、
- 今まで:16:9で生成 → 自前でスマートクロップ・リフレーミング → プラットフォームごとに書き出し
- これから:最初から9:16で生成 → おまけで16:9も作る
くらいの発想のほうが自然になってきます。
Google vs OpenAI vs Microsoft:誰の「個人OS」に乗るかが本丸になってきた

正直、ここが一番のポイントです。
パーソナルインテリジェンス vs ChatGPT(Assistants + Memory)
- コンテキストの幅
- Google:
- Gmail / Calendar / Drive / Maps / Android / Chrome / 検索履歴…
→ 「生活のログ」がほぼ全部取れる
- Gmail / Calendar / Drive / Maps / Android / Chrome / 検索履歴…
-
OpenAI:
- ユーザーがアップロードしたファイル
- 連携サービス次第
→ “OSそのもの”のログは持てない
-
アイデンティティの深さ
- Google:
- 何年も前から使っている Googleアカウント がそのままアンカー
- プライベートも仕事(Workspace)もAndroidも紐づく
- OpenAI:
- ChatGPTアカウントはまだ「後から作った1アカウント」にすぎない
「どっちのモデルが賢いか?」も大事ですが、
“誰がユーザーの人生ログを一番握っているか?” のほうが、長期的には効いてきます。
開発者視点でも、
- OpenAI:APIとしての柔軟さ・機能は強い(関数呼び出し、Assistant API、ツール連携)
- Google:OSレベルの埋め込み + アカウント統合 + 公式アプリ群とのディープ連携 が強い
という住み分けになってきていて、
「LLMそのもの」よりも、「個人データ + OS統合 を誰が握るか」
が、ここ1〜2年の勝負どころになってきた感じがします。
Veo 3.1 vs Sora系:誰が縦コンテンツの“工場”を押さえるか
- OpenAI(Sora):
- 映画的な16:9長尺のデモが強烈
- クリエイティブ・映像業界寄りのユースケース
- Google(Veo 3.1):
- 縦型ショートのネイティブ対応
- 将来的に:
- YouTube Shorts / Ads / マーケツールとの統合がほぼ確実
独立系の「AIショート動画スタートアップ」は、
ぶっちゃけかなり厳しくなります。
- モデル性能で差別化 → Veo/Soraに追いつかれた瞬間に終わる
- 「縦動画をAIで作れます」だけでは、もはや機能的なモートにならない
残るのは:
- 特定業界に特化したデータ(スポーツ、VTuber、教育など)
- 編集UI/テンプレート/チームワークフロー
- コミュニティや配信ネットワーク
のようなアプリケーションレイヤーの価値です。
ただ、懸念点もあります… 🤔
パーソナルインテリジェンス:便利さの裏にある“人生丸ごとGoogle化”リスク
正直、一番怖いのはここです。
- メール
- カレンダー
- ドライブ
- ブラウザ履歴
- 位置情報
- そして、これから連携するサードパーティアプリの情報
これを一つのAIエージェントが横断して見るということは、
「“あなたの人生の知識グラフ”をGoogleのバックエンドに丸ごと構築する」
という意味でもあります。
もちろん、Googleはプライバシーと規制対応をかなり気にするはずですが:
- 「なぜこの提案をしてきたのか?」の説明可能性
- 「この情報はAIに使わないで」の粒度の制御
- 「消したはずの履歴が、どこまでAIの内部表現に残っているのか?」
といったあたりは、ユーザーから見えづらくなります。
開発者視点でも、
- PIコンテキストを使わせてもらう代わりに、
- 同意フロー
- 利用目的の厳格化
- ポリシー違反時のペナルティ
など、運用コストとリスクは確実に上がる。
そして何より、
この個人記憶は他社に“エクスポート”できない
というロックインの匂いがかなり強いです。
「自社アプリのユーザーデータ」ではなく、
「Googleの“あなたOS”に寄生して動くアプリ」になるイメージなので、
- Googleの方針変更・料金体系変更
- 特定カテゴリアプリへの締め付け
の影響をモロに受けやすくなります。
外部開発者は「二級市民」になる可能性
これも歴史的によくあるパターンですが、
- Google純正アプリ:
- より深いPI統合
- 隠しAPI的な連携
- 外部開発者:
- 安全な範囲だけの抽象化されたAPI
となる可能性はかなり高いです。
「Google カレンダーアプリはここまでできるのに、サードパーティカレンダーアプリはそこまで触らせてもらえない」
みたいなことが、PIレイヤーでも起こりえます。
ぶっちゃけ、
“PIとどれだけ深く統合できるか”で、アプリ間の競争条件が歪む懸念はあります。
Veo 3.1:コストと“バズる動画”のギャップ
縦型動画がネイティブに生成できるのは素晴らしいのですが、
現実的な課題はやっぱりここです:
- フル動画生成は計算コストが重い → 課金も重い
- 広告代理店やSNS運用チームが「とりあえず100パターン試そう」とやると、普通に破産コース
さらに、
SNSでバズるかどうかは、「構図がちゃんとしているか」よりも、
「文脈・トレンド・人間のノリ」によるところが大きい
ので、
- 「Veoで1クリックTikTok量産!」みたいなサービスは
- クオリティも
- コストも
どちらも期待値を下回る可能性が高いです。
個人的には、
- Veoはラフ生成 + クリエイターが仕上げる用として使う
- 全自動バズり動画製造機としては、あまり期待しすぎない
くらいが現実的なスタンスだと思っています。
プロダクションで使うか?正直まだ「全乗り」は様子見です

最後に、エンジニアとしての自分の結論を書いておきます。
パーソナルインテリジェンスについて
- やるべきこと
- 自社プロダクトに対して:
- 「もしユーザーにOSレベルの専属AIがいたら、
うちのアプリには“何を任せたいか?”」を洗い出しておく
- 「もしユーザーにOSレベルの専属AIがいたら、
-
アーキテクチャとして:
- ユーザープロファイルやメモリを完全に自社DBにロックインしない
- 将来「Google PI / Microsoft Graph / OpenAI Memory」などと二重化できる設計にしておく
-
まだ様子見したいポイント
- 実際のAPI仕様・権限モデル・料金
- どこまで外部開発者にもフル機能を開くか
- ユーザーのプライバシー UX(オプトイン/アウトの粒度)
結論:
「前提として設計に入れておくべきだが、全てをGoogle PI前提に振り切るのはまだ危険」
というのが今の感覚です。
Veo 3.1 縦型動画について
- やるべきこと
- 動画生成・編集ワークフローを持っているなら:
- 今すぐ aspect ratioを可変にする設計 にしておく(16:9ハードコードは危険)
- 9:16 → TikTok / Reels / Shorts 用のエクスポートラインを別途チェック
-
初期段階では:
- Veoを「試作用ジェネレータ」として導入
- 本番用は人間の編集を前提にする
-
まだ様子見したいポイント
- 実コスト(クレジット消費)とスループット
- SNSごとのAI動画ポリシー(透かし・ラベリングなど)
結論:
「実験・プロトタイプ用途では積極的に使う。
本番大量配信ワークフローの主役にするのは、料金と品質が見えてから」
というラインかなと思います。
まとめ:OSレベルの“あなた専属AI”と、“縦前提コンテンツ工場”の時代へ
- パーソナルインテリジェンスは、
- 各アプリごとの「ミニAI」から、
- OSレベルの「一人一AI」へのシフト
- Veo 3.1の縦型対応は、
- 横長前提の生成から、
- 「ショート動画前提のコンテンツ工場」へのシフト
正直、どちらもアーキテクチャ変更レベルのインパクトを持っていて、
単なる「新UIが出ました」「新しいパラメータが増えました」で済ませる話ではありません。
開発者としては、
- どの「個人OS」(Google / Microsoft / OpenAI)にどれだけ乗るか
- どこを自前で持ち、どこをプラットフォームに委ねるか
- 動画・コンテンツ周りを「縦前提」で設計し直すか
を、この1〜2年で決めざるを得なくなります。
ぶっちゃけ、
「うちはとりあえずChatGPTだけ見てればOK」という時代は、もう終わりかけています。
これから数年は、
- Googleのパーソナルインテリジェンス
- MicrosoftのCopilot + Graph
- OpenAIのAssistants + Memory
この三つ巴の上に、自分たちのプロダクトをどう位置づけるかが、
エンジニアリングだけでなく、ビジネス的にも勝敗を分けるフェーズになるはずです。


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