「またAIの新製品かよ…」と思いつつ、
・どのベンダーを使うか迷う
・社内で「どこにベットするか?」と聞かれる
・自前でエージェント基盤を組むか、SaaSに乗るか決めきれない
そんな状況でモヤモヤしている方、多いんじゃないでしょうか。
2026年1月、Google / Anthropic / Apple から一気に大型発表が出ました:
- Google Personal Intelligence(PI)
- Veo 3.1(縦動画対応)
- Anthropic Cowork
- Apple–Google Gemini 提携
ニュースとしては追いきれないくらい出てますが、
この記事では「何が新しいか」よりも
これって、アーキテクチャのゲームチェンジじゃない?
という観点で、エンジニア目線+ちょっと辛口で整理してみます。
一言でいうと:「AI版 iOS/Android 時代」に入った

この1月の発表群をまとめて一言でいうと、
いよいよ「AI も OS ネイティブの世界に入った」
という感じです。
歴史のアナロジーで言うと:
- Google PI → 「iCloud + Siri + Google アカウント」が1つの“人格OS”になった感じ
- Anthropic Cowork → Heroku みたいな「エージェント用 PaaS」
- Veo 3.1 → スマホが最初に “ちゃんとした縦動画” 撮れるようになったタイミング
- Apple–Gemini → Safari のデフォルト検索エンジンに Google を選んだ時の再来
正直、このパッケージで出てきたことで
- 「LLM どれが強いか」競争から
- 「誰の OS / 個人モデルの上で動くか」競争へ
主戦場が一段シフトしたな、という印象です。
Google Personal Intelligence:
「アプリ中心」から「ユーザー人格中心」への構造転換
まずは Google PI。
ぶっちゃけ、名前だけ聞くと「また新しいアシスタント?」なんですが、中身のコンセプトはかなり本気です。
これは「AI OS のユーザープロファイル」
Google PI はざっくり言うと:
「あなた専属の長期記憶付き AI」= Google アカウントの次のレイヤー
- Gmail / Calendar / Drive / Photos / YouTube / Android などをまたいで
- 「この人は誰で、何をしてきて、何を好んでて、誰と関わっているか」
- を長期的に学習する、永続的なユーザーモデル
今までの Google Assistant は「その場の問い合わせを処理するボット」でしたが、
PI は「この人の分身として、他のサービスを呼び出すエージェント」に寄ってきています。
正直、ここまで踏み込んで「専属AI」と言い切ったのは一つの転換点です。
開発者視点:統合できないアプリは“二級市民”になる
記事でも触れられていましたが、今後ほぼ確実に:
- PI から
「◯◯で予約しといて」「このサービスでこれやっといて」
といった自然言語タスク → アプリ連携が主流になります。
すると何が起きるか。
- PI と統合しているアプリ
→ 「旅行プラン立てて」と言えば勝手に候補に挙がる - 統合していないアプリ
→ ユーザーが「わざわざアプリを開きに行く」存在になる
これ、モバイル初期の
「ディープリンク対応してないサービスは、シェアメニューや検索から呼ばれない」
の再演です。
Android / Chrome / Workspace 向けのプロダクトを作っているなら、
“PI にどう自己紹介するか” を設計しないと、数年後にじわじわ効いてきます。
ぶっちゃけ怖いのは「ランキング」と「ロックイン」
懸念もあります。
- どのアプリが選ばれるかは PI のブラックボックス
- 「ホテル予約して」と言った時、
- なぜ A 社が優先され、B 社が選ばれないのか
- 広告?パートナーシップ?ユーザー履歴?
-
開発者側はアルゴリズムの中身をほぼ見えないまま戦うことになります。
-
ユーザーデータ ロックイン
- 最適な体験を出そうと思うと
- アプリも PI に細かいユーザーデータを渡したくなる
- すると「このユーザーモデル抜きで他社に移行する」のがどんどん難しくなる
正直、“AI 版 Google 検索問題” がそのまま OS レベルで再現される懸念があります。
ただ、ユーザーにとっては「楽になる」のも事実で、そこが悩ましいところですね 🤔
Veo 3.1:

研究ネタじゃなく「TikTok 制作ワークフロー」に刺しに来た
Veo 3.1 は技術的には地味です。
モデルアーキが劇的に変わったわけではなく、
- 9:16 の縦動画をネイティブ生成
- モーション安定、シーン整合性アップ
という「地に足ついたアップデート」です。
でもここがポイントで、
「研究者向けのデモ」から
「クリエイター/マーケターの実務ツール」
に完全に振ってきた
と感じます。
クリエイター目線では「やっと来たか」機能
いま現場で本当に使われているのは:
- TikTok / Reels / Shorts 用の縦動画
- 5〜30秒くらい
- テキストオーバレイ、BGM、簡単なエフェクト
これまでの多くの生成動画ツールは
- 横長 → 後処理でトリミング
- 解像度もアスペクトも中途半端
という「研究エンジニアの都合寄り」な設計が多かった。
ネイティブで 9:16 が出せるのは地味ですが、ワークフロー的にはクリティカルです。
編集ツール側での余計なパイプライン構築(クロップ・再エンコード・プレビュー最適化など)がかなり削れます。
ただし、差別化はますます難しくなる
懸念はむしろこちら。
- Veo / Runway / Pika / Sora 系の品質がある程度並んでくると
- 「AI 動画を出せること」自体は差別化にならない
- 差が付くのは
- どの程度ワークフローに最適化しているか(撮影 → 編集 → 配信まで)
- どのコミュニティに刺さるプリセット/テンプレを持っているか
技術的 Moat から、ワークフロー / コミュニティ Moat へのシフトがさらに進むな、という印象です。
API 提供側としては、
- aspect_ratio や duration, style などはもはや「当たり前」
- どうクリエイターが「毎日使うか?」を支える UX のほうが決定打
ここを勘違いして「モデル精度だけ追うプロダクト」は危ないフェーズに入ってきました。
Anthropic Cowork:
「自前でエージェントループ書く時代、そろそろ終わるかも」
個人的に一番「お、来たな」と思ったのはこれです。
Cowork はざっくりいうと:
Claude ベースの「汎用エージェント」を
企業向けにパッケージして提供する “AI Co-worker”
ポイントは「14日で作りました」というマーケ文句ではなく、
- Anthropic が
- 「LLM ベンダー」から
- 「エージェント SaaS ベンダー」に踏み出した
- つまり、LangChain・自前エージェントフレームワークと真正面からかち合う
というところです。
いま、どの企業も同じようなエージェントを自前で組んでいる
ここ1〜2年、どの現場でも似たようなものを作っています:
- タスク分解 → ツール呼び出し → 状態管理
- チケットシステム / ドキュメントDB / CRM をツールとして登録
- 「問い合わせ要約」「議事録作成」「RFP ドラフト」「コードレビュー」…
正直、みんなほぼ同じホイールを再発明している状態です。
Cowork はここに対して
「そのホイール、もうパッケージで売ります」
と言ってきたに等しい。
メリット:Heroku 的な「動けばいいからとにかく早く」
開発・運用チームからすると:
- 「Claude + function calling + 独自ループ」を組むより
- SaaS として Cowork にツールを登録
- ワークフローをテンプレとして設定
- だけで、かなり“それっぽい”エージェントが動く
という世界が見えます。
PoC や部門内ツールなら、これで十分というケースはかなり多いはずです。
ただし「抽象化税」と「逃げ道の確保」がポイント
懸念は3つあります。
- 抽象化税(Abstraction Tax)
- タスク分解やリトライ戦略を自前で最適化したい時、
- Cowork の中身には基本触れられない
-
コスト・レイテンシ・品質を細かく制御したい高トラフィック用途には向かない可能性
-
プロダクト境界問題
- 「ここまでは Cowork でできるけど、このニッチな業務は無理」
- → 結局、Cowork + 自前エージェントのハイブリッドになりがち
-
統合や権限管理が逆に複雑化するリスク
-
将来のマイグレーションリスク
- 最初はラクなので Cowork にどんどん業務を寄せる
- 数年後、「コストやポリシーの理由で別ベンダーに移りたい」となったとき、
- Cowork のワークフロー定義・状態管理ロジックを全部引き剥がすのはかなりしんどい
ぶっちゃけ、
「Heroku 最高!」って言ってたチームが
ある日 AWS 生運用に帰ってこなきゃいけなくなった
あの感じが数年後に起きる可能性はあります。
個人的には、「Cowork を使うなら最低限、
・ツールのインタフェース定義
・ワークフローテンプレ
は自前でもリプレイス可能な形に分離しておくべきだと思っています。
Apple–Google Gemini:

これは「Siri のアップデート」じゃなく「AI 版 検索エンジン契約」
この提携は、エンドユーザー視点では
- 「Siri が急に賢くなった」
- 「iOS の文章要約やリライトが自然になった」
という体感で語られがちですが、開発者 / プラットフォーム視点で見るべきポイントは全く別です。
Apple がついに「OS レベルの AI 中枢」を外部ベンダーに明け渡した
という事実です。
Apple の哲学からするとかなりの“異例”
これまでの Apple はずっと:
- プライバシー重視
- on-device 優先
- コア技術はできるだけ自社で
という方針でした。
それが、クラウド LLM のメインエンジンとして
- OpenAI ではなく Google Gemini を選び
- Siri / Apple Intelligence の裏側でガッツリ使う
これは、2000年代に
Safari のデフォルト検索エンジンに Google を選んだ
のと同じくらい大きな戦略判断だと思います。
iOS/macOS 開発者にとって何が変わるか?
表向きには、我々が触るのはあくまで
- SiriKit / Intents
- Apple Intelligence 系のフレームワーク(テキスト生成 / 要約など)
であって、「Gemini API を直接叩く」ことはありません。
でも裏で Gemini が動くことで:
- Siri の理解能力・生成品質が一気に底上げ
- システムレベルの「文章改善」「要約」「コード補完(Xcode)」などがかなり実用レベルに
なる可能性が高い。
つまり、iOS/macOS 向けアプリを作るなら、
「自前で中途半端な LLM 連携を組むより、
OS 標準の AI API を叩いたほうが UX 的にも将来のアップデート的にも得」
という力学が強まります。
とはいえ、二重ベンダーロックインはかなり重い
懸念もかなりシビアです。
- 二重ロックイン構造
- 我々は Apple の API を使っているつもりでも
- バックエンドは Google Gemini に依存している
-
→ Apple が Gemini を他社に切り替えたとき、
同じ API コントラクトでも挙動が微妙に変わる可能性 -
リージョン / 規制依存
- Gemini の提供状況・検閲ポリシーは地域ごとに変わりうる
-
同じ iOS でも、国や OS バージョンによって Siri の能力差が出るかもしれない
-
デバッグ不能なブラックボックス
- 「昨日まで通っていた Siri 連携フローが、今日から変な結果を返す」
- その原因が
- Apple 側のバグなのか
- 背後の Gemini のアップデートなのか
- 開発者からはほぼ見分けがつかない
正直、「検索エンジンのアルゴリズム更新で SEO が死んだ」
あの現象が AI エージェント連携で起きる未来がちらつきます。
結局、誰が一番ダメージを受けるのか?
この1月の発表で一番板挟みになっているのは誰か?
かなりハッキリしています。
「汎用 AI アシスタント」としての ChatGPT
- Google PI + Siri+Gemini + Cowork が固まると、
- 日常利用は
- Android ユーザー → PI
- iOS ユーザー → Siri+Gemini
- 企業ワーク → Cowork
- という構図が濃くなる
ChatGPT は
「わざわざ Web に行って話しかける AI」
になりがちで、「デフォルトの AI」ポジションを OS に奪われるリスクがあります。
独立系エージェントフレームワーク / オーケストレーション SaaS
- LangChain ベースの no-code エージェントツール
- 「社内のタスク自動化をノーコードで!」系スタートアップ
こういったレイヤーは、Cowork や Google PI のような
- モデル提供者が直接「完成品エージェント」を出してくる動き
に最も直撃します。
「モデル API をラップするだけ」のビジネスは、
スピード勝負で今年〜来年中に見直しが必要だと思います。
「AI 動画出せます」だけのクリエイティブツール
Veo 3.1 で縦動画が当たり前になると、
- 「AI 動画を数クリックで生成!」だけでは差別化になりにくい
- 必要なのは
- キャンペーン管理
- クリエイターとのコラボ機能
- 配信パフォーマンスの A/B テスト
など、周辺のプロダクト機能です。
ただ、全部バラ色というわけではない:
各発表ごとの「Gotcha(落とし穴)」
ざっと整理すると、こんな感じです。
Google PI の落とし穴
- ベンダーロックイン(ユーザーモデル依存)
- ランキングの不透明さ
- プライバシー説明・権限設計のコスト増大
→ 対策としては:
- PI とは「どこまで」情報を共有するかを、自社でポリシー化
- PI 経由だけに頼らず、自前の UX ルートも残す(直接アプリ起動の価値づけ)
Veo 3.1 の落とし穴
- 生成コストの増大(縦動画で利用量が爆発しがち)
- モデル品質のコモディティ化による差別化困難
→ 対策:
- 「どのくらいの長さ・解像度までをデフォルトにするか」をビジネス的に設計
- 単なる動画生成ではなく、「顧客のゴールまでのワークフロー」を売る
Anthropic Cowork の落とし穴
- 抽象化税(細かい制御がしづらい)
- 「Cowork の外」に出た瞬間の統合コスト
- 数年後のベンダー変更コスト
→ 対策:
- エージェントの「役割・ツール定義・ワークフロー」を
- できるだけベンダー非依存の仕様(JSON など)で管理
- 重要ワークロードは、必ず「生 Claude API で再実装可能か?」を検討しておく
Apple–Gemini の落とし穴
- 二重ベンダーロックイン(Apple+Gemini)
- リージョン差、OS バージョン差による挙動のばらつき
- ブラックボックス化によるデバッグ難
→ 対策:
- OS バージョン / リージョンごとに AI 機能のフォールバック戦略を用意
- クリティカルなビジネスロジックは
- OS AI に丸投げしない(説明責任の観点)
で、プロダクションでどこまで乗るべきか?(個人的結論)
正直に言うと…
「全部に一気にベットする」のは危険だけど、
“OS レベル AI” に乗らない戦略も、もはや現実的ではない
というのが今の感触です。
年の実務的スタンス案
エンジニア / 技術リードとしては、当面こんなスタンスが現実的だと思っています:
- Google / Apple の OS レベル AI には「乗る」前提で設計
- Android / Chrome / Workspace → PI 連携前提で UX を設計
- iOS / macOS → Apple Intelligence API が出たら、優先的に採用
-
ただし、「そこにしか存在しないビジネスロジック」は置かない
-
エージェント基盤は、いきなり Cowork にフル依存しない
- PoC や非クリティカル領域 → Cowork でサクッと検証
- 中核業務 → 依然として自前オーケストレーション+Claude/OpenAI/Gemini を併用
-
将来のマイグレーションを見据え、“エージェントの脳” と “道具箱” をコード上で分離
-
動画・クリエイティブは「モデル選定」より「ワークフロー設計」に時間を割く
- Veo 3.1 を含め、どのモデルも「そこそこ良い」前提で、
-
クリエイター/マーケターが毎日ストレスなく回せる仕組みを優先
-
マルチベンダー前提のアーキテクチャにしておく
- モデル/OS ベンダーが入れ替わっても
- できるだけ「設定変更」で乗り換えられる構造(Adapter パターン)
- ベンダー固有機能(PI の特殊メモリ / Cowork 固有 API など)は
なるべく「ボーナス機能」として扱う
最後に:2026年は「AI プラットフォームの大勢が見える年」

2023〜2024年は「どの LLM が一番賢いか」で盛り上がっていましたが、
2026年はたぶんこう語られるようになります。
「あのとき Google PI / Siri+Gemini / Cowork が出て、
“AI をどの OS / どのエコシステムの上で動かすか” が決まっていったよね」
正直、今が「スマホ初期の 2010〜2012 年」に近い空気感だと感じます。
- まだ誰も、どのプラットフォームが最終的に勝つか分からない
- でも「OS とクラウドが一体になった世界」に向かっているのは明らか
だからこそ、今のうちから
- 自社の AI 機能を
- どこまで OS / ベンダーに依存させるか
- どこを自前の知的財産として握り続けるか
をはっきり線引きしておくことが、本当の意味での「AI 戦略」になるはずです。
プロダクション投入?
正直どれも “全面依存” はまだ様子見ですが、
「前提に入れずに設計する」のはもっと危ない、というのが今の結論です。


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